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【児童文学】ハカラメ(作・水崎耀子)【2】

水崎耀子 ]

|  閲覧:695  |  コメント:2  |   一言コメント:0  |   お気に入り登録:0  |

投稿  08年08月17日 23:29:58  |  最新の更新  08年08月17日 23:29:58

おばさんの家は、思っていたよりずっとあたたかかった。
食のしたくのゆげが心地いい。ちかくで、波の音がする
車のエンジン音が、だんだん大きく聞こえて来て、げんかんの戸があいた。
ただいまぁ~」
茶けた顔のおじさんが入ってくると、潮のにおいがした
「どうだった。雪まつり」
「人で、人で、つかれちゃった。雪像は、あったかくて、とけているしさ
「それでも、みんなといっしょだら楽しいべさ」
「うん、そりゃそうだぁ。いい気ばらしさせてもらったぁ。父さん、これ、みやげ」
「およっ、こりゃなんだぁ」
おじさんが、ぼくを見つけて言った。
「なんだかわからんけど、小笠原諸島からだってさ。雪まつり会場で、みんなにくばってたんだ」
「ほおっ、そんな遠いところからか。よく来たもんだなぁ。どれ」
じさんは、お酒のはいったコップをおくと、メガネをかけてぼくを見た。
「かあさん、こりゃ”ハカラメ”っていう葉っぱだとよ。おまえの手のひらみたいだな」
「トゲのないサボテンみたいだわ。南の島で育ったんだね」
おばさんも、虫メガネで、ぼくについていたせつめい書を読んだ。そして、書いてあるとおりに、ぼくを画びょうでかべにとめた。
ぼくは、この家がよく見えるようになって、少しおちついた。
     
ただいま」
セーラー服を着た女の子が、かえって来た。
が白くてかわいいなぁ
「ああ、おなかがすいた。かあさん、雪まつりすごかったっしょ。でっかい雪像があってさ。あれっ、これなに?」
「おまえは、なぁんも知らんねぇ。ハカラメって言って、小笠原の葉っぱだっしょ」
「なんもさ、かあさんだって何も知らないでもらって来たんだぁ」
じさんはイカをかみながら、わらって言った
ぼくは、からだだけでなく、心もあたたかくなったよ。
 
あさ、カーテンが開くと、海が見えた。
小笠原の海とぜんぜんちがう。
 
父さん、やっぱり理恵は、沖縄に行くんだと。ともだちと沖縄ではたらくんだとさ」
おばさんが、朝ごはんをよそいながら言った
「なに、このあいだ言ってたはなしか。あったかいとこがいいってか。せんぱいのおみやげ屋、手伝うっちゅうんだべ。おれは、はんたいだ」
わたしだってはんたいだよ。だけど、兄ちゃんだって、はんたいしても東京へ行ってしまったっしょ
おじさんは、朝ごはんも食べずに出かけてしまった。
ばさんと理恵ちゃんも、だまってごはんをたべている。
    
げんかんでくつをはきながら、理恵ちゃんがぼそっと言った
「父さんがはんたいしても、わたしは沖縄に行くからね」
   
 
みんなが出かけたあと、おばさんがそばに来た。
「あんたも理恵とおんなじだぁ … 遠くに来ちゃってさ。父さん母さんは、あったかい南の島だべさ。あれっ、こりゃまた。ほう、じいちゃんの白い鼻毛みたいな根が出てる」
ばさんは、うれしそうにぼくをなぜた。がさつく手が、くすぐったい。
 
その夜、おじさんはよっぱらって帰って来た。
おばさんがおじさんの正面にすわって言った
「父さん、南の島の葉っぱから根が出たさ。こんな北のとおくへ来てさぁ。これ、見て。なんだかわたし、なみだが出てきたよ。兄ちゃんも、東京でがんばってるんだろうなぁって。理恵にも、すきなようにさせてやらないかい
 
おじさんは、だまったままで、一升ビンからお酒をついだ。
   
 
つぎの日のあさ、おじさんがメガネをかけてこっちを見た。
「かあさん、ほれ、新聞についてきた本にこいつがのってるぞ。マザーリーフって言うんだそうだ。葉っぱからちょくせつ 芽が出るからだとさ」
へぇ、シャレた名前もついてるんだ。マザーリーフかい
「理恵も、南の島で芽が出るかもしれんか ―― 。きょうは、ひさしぶりに船を動かしてやるかな」
そう言うと、おじさんは長ぐつをはいて出かけた。
 
ばさんは、おじさんが見ていた本を読んでいる。
フーン、つりがね型で、みどり色からうっすらピンクのかわいい花が・・・ スズランのクリスマスツリーみたいだねぇ。日照時間が・・・ 」
本から目をはなして、じいっとぼくを見た。
花がさいたら、写真をとって、小笠原の島に送ってあげようね」
   
 
まどの外に、海が見える。
くらい くらい海だよ 風がビョービョーいう こん色の海さ
家の中には 父さん母さんがいて 兄さんと妹もいたんだ
雪が飛んで うずまいて 痛いくらいにさむい海だよ
カモメがつらそうに鳴くけれど
この海は 父さん母さん島のある小笠原 
東京と沖縄にだってつながっているん
父さんの船が あったかい家をめざして かえって来るよ
 
 
おわり
著作 水崎耀子 挿絵 高田弘子
協力 小笠原ホエールウオッチング協会(OWA)

この記事へのコメント

  1. 水崎耀子

    08年08月17日 23:39:46

    ハカラメは、学名をセイロンベンケイソウといいます
    葉(ハ)から直接芽が出るので小笠原諸島などでは”ハカラメ”と呼ぶそうです。
    別称をマザーリーフ。

  2. りんどう

    08年09月06日 13:58:20

    絵本を見るような感じで読ませて頂きました。
    簡潔で清潔でそれでいて情愛が感じられて
    潮の匂いまで漂って来ました。

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